そもそも検査済証とは?

検査済証とは、建築物(今回のお客さまの場合は、新築(当時)住宅です。)の建築が完了してから、使用開始するまでの間に、担当の役所(市役所の建築指導課や土木事務所等)または民間の検査機関が、その建物が確認申請された通りに建築されているかどうか、法令を遵守しているかを検査して、合格したときに発行する書類です。

この書類があることにより、建築当時の建築基準法に合致して建てられた建物であることの証明となります。(現行の基準に合っているかどうかの証明にはなりません。)

 

建築基準法の改正当時の状況

構造計算書偽装事件(いわゆる姉歯事件)が発覚してから、このようなことが起こらないよう「建築確認・検査の厳格化」を大きな目的として、平成19年(2007年)6月20日に建築基準法が改正施行されました。

これ以降に建築された建物ならば、通常なら完了検査を受けているはずなのです。

ですが実際には、今回お客さまが購入しようとした中古住宅に、検査済証が存在しない(完了時の検査を受けた記録がない)ことがわかりました。全国的に知られた住宅メーカー施工だったにもかかわらず、です。

平成19年(2007年)の建築基準法改正前は、残念ながら業界のコンプライアンス意識もそれほど高くなく、中小大手の建設会社を問わず、住宅の完了検査の取得率は、2000年で約4割、2007年でも約8割といったところでした。これを解消する目的もあっての法改正となりました。

(参考資料 建築基準法に基づく完了検査実施率の向上に関する研究

現在は、融資の際も、登記時も、検査済証を確認するのが一般的なので、検査済証の取得率は、ほぼ10割に近いと思います。

今の時代からすると到底考えられませんが、改正前、つまり10数年前までは、費用や手間を惜しんだり、引き渡しを急いだり等の理由で、完了検査を受けない住宅が多数ありました。(法律上は完了時の検査が必要でしたが、罰則等を受けることも実害もなかったので、よく知られたハウスメーカーでさえ、検査を受けていない物件が多かったのです。)

 

検査済証が無いと、融資はどうなる?フラット35は使える?

実際に市場に流通している中古住宅では、検査済証が無いことは珍しくなく、これを理由として、金融機関が住宅ローンの引き受けを拒絶するケースは極めて少ないと思います。(確認申請・確認済証が未取得のケースや、違反建築等である場合は、住宅ローンを利用できない事例はあるようです。)

住宅金融支援機構のFLAT35の場合でも、確認申請を取得した記録(役所で確認できます)さえあれば、検査済証や設計図面・書類自体を紛失していても、制度的には融資可能になっています。(FLAT35の基準に合格して、適合証明書の発行が可能な場合、というのが大前提ですが。)

 

検査済証が無いとき、挽回の手立てはある?

そんなときに検討する方法をご紹介します。

 

「ガイドライン調査」

そんなときに、あまり一般的ではありませんが、ガイドライン調査という方法があります。

概略ですが以下の流れになります。あくまでも確認申請をして「確認を受けた物件」の場合です。

1. 対象の建物について、調査者が図面や現地の調査を行う。

調査者とは:依頼者(お客さま)が発注した建築士などのこと

 ↓

2. 調査者が作成した調査報告書を民間検査機関(判定者)に提出する。

 ↓

3. 検査機関が調査報告書と現地の確認検査を行う。

 ↓

4.  確認検査の結果に基づき、検査機関が指定された範囲の法適合判定を行う。

 

実際、ガイドライン調査はどうなのか?

住宅・非住宅を問わず、ガイドライン調査の依頼や相談は、当社でもよく受けます。当社の場合、これまでのほとんどが増改築や用途変更の相談に付随してのケースが多かったので、今回のお客さまのような売買契約等の取引時に、ガイドライン調査を検討されるケースは、あまりありませんでした。

 

定ができる範囲は、ケースバイケース

一般的に、検査機関では「ガイドライン調査」に関して、依頼者に関係法令を選択してもらい、それに関わる部分ごとに、法の適合について判定します。(例:一般法令、構造法令の選択制など)

ほとんどの場合、一番問題になるのは、やはり「構造」部分です。

「構造」について法令に合致しているかどうかをすべて確認しようとすると、基礎コンクリートのコア抜き(穴を開けてのサンプル取り)調査や、壁・天井を一部解体しての柱・梁の確認調査を伴うことが一般的で、建物にかかるダメージや経済的な負担も大きくなります。

構造の判定に関わる調査では、大抵の場合、復旧工事も必要となるため、建物の規模や仕様によっては(検査機関に持ち込むための)調査だけで、復旧を含めると数十万円以上かかるケースもあります。

 

費用はそれ以外にも、、

ガイドライン調査の判定には、これらの調査費用とは別に民間検査機関に支払う手数料や検査費用も発生します。

一般的な住宅では、適合判定をする法令上の範囲(構造関係の法令を含むかどうか等)や、どの検査機関を選ぶかにもよりますが、全体で10数万~30万円弱程度かかると思います。(構造に関する判定を含めると、調査費用も審査費用もグッと高くなります。)

大方の依頼者は、これらの費用負担と費用対効果を考えて、

・目視確認で判断できる箇所(開口部、仕上げ、寸法、消防関係など)のみの調査

・検査済証なしでも対応できる方法や範囲の工事(確認申請が不要な工事やリフォーム、別棟での増築、建て替え等)

を選択されることが多いです。

地元行政機関との事前協議においても「ガイドライン調査という制度があるのは知っているが、(担当者ベースでは)経験したことがない」と聞くことが以前は多かった印象があります。

 

12条5項報告

建築基準法には「12条5項」報告という制度があり、技術や制度に問題がある建物(未確認、未検査、違反建築など)について建築士などが調査報告をする仕組みがあります。

未確認や未検査などの建物は、一般的にはこの制度を準用することが多いのですが、調査の範囲や内容についての法令上の細かい規定はなく、補足資料的な位置付けが強い書類です。

また、民間の検査機関であっても「技術違反」「制度違反」に対する是正指示や法令を追認する権限は与えられていないので、最終的には「適法・違法」に関する建物の調査結果が出るのみです。(これらの調査結果書類は、あくまでも建築確認等が無いときの「代わりの」文書なので、同等の法的根拠を必ずしも持つものではありません。)

 

破壊検査or非破壊検査

12条5項報告では、調査範囲も任意なので、破壊検査(建物の一部解体など)まで行うのは実際には、まれです。

裁判や調停など当社でもよくこの問題に対応しますが、破壊検査は建物を傷めることにもつながるので、非破壊検査でできる範囲が一般的になっています。

非破壊検査の場合はすべてにおいて調査確認できるわけではないので、どこまでで見極めるのかというのも重要な問題になります。

 

困ったときは、まずご相談ください

いずれの場合も、どの範囲までの法適合性を求めるか、建物のどこまでを調べるのか、費用負担をどうするか、などについては関係者を交えての協議検討が必要です。

「ガイドライン調査」「12条5項報告」に関するご相談もお気軽にどうぞ。

 

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