お客様からいただいた住宅関連のご質問に当社の建築士が回答したものを掲載しております。
お悩み
建ててから一年も経たない物件にもかかわらず、度々ブレーカーが落ちてしまいます。電気工事店に見てもらったところ、電柱から宅内への引き込み電線が細すぎる、契約アンペアが低くすぎる、との見立てでした。また、建築時に引き込みのミスがあるのではないかとも指摘されました。この件を施工会社に話したところ、自分たちには非がないとの回答でした。引き込みをやり直し、電力会社に申請をし直さないと問題は解消されないため、施工会社の責任を問うことはできますか?
回答
①ブレーカーが落ちる要因
一般的な家庭のコンセントであれば、1回路あたり15Aを超えると分電盤内の子ブレーカーが落ちることがあるかと思います。度々ブレーカーが落ちるといっても、特定の機器や場所で家電を使用すると落ちる場合と、使用状況や場所とは関係なく落ちる場合では状況が異なります。前者の場合は、電気ストーブなどのW数の大きな家電を特定の回路でまとめて使用したため、ブレーカーが落ちやすくなっているといったことが考えられます。
②電気容量と工事内容について
一般的な住宅の電気契約だと60A程度が使用量の最大値のはずです。(60A自体は、建物の広さが30~40坪前後の一般家庭では、標準~余裕のある容量ではないかと思います。)もし60Aを超える容量にする場合は、電力の基本料金や工事内容も変わってきます。一般の住宅では60A超の契約をすることはあまりないため、あらかじめ電力会社との協議が行われるのではないでしょうか。60A以上の契約は、店舗や事務所、かなり大型の住宅が対象となる場合が多く、ブレーカー類も通常の支給品ではなく個別に購入した専用品が必要になるかと思います。おのずと引込幹線の太さも変わってくるので、設計段階からこういった契約を想定していないと、後々に配線や分電盤、回路数等の変更工事が必要となってきます。分電盤やブレーカーの工事も60Aを超えると規格や機器が全く変わるため、新築時に60Aを超える電力使用を見込んで設計していたならば、通常の電気工事より割高になっていたと思われます。
③施工業者の責任は問えるのか?
居住後にどの程度の電気容量が必要か、家電の種類や台数、定格容量の打ち合わせを設計時にしていた場合、容量まで含めて打ち合わせをしていたにもかかわらず、その必要容量を確保できていなければ、契約不適合の可能性は追求できるかもしれません。
一方で具体的な使用容量までの打ち合わせ等がない場合や、ご自身の使い方によるブレーカー落ちが原因の場合は、施工会社の責任追及は難しいかと思います。
④まとめ
昨今、電気は私たちの暮らしに欠かせないもので、ブレーカーが頻繁に落ちるというのは生活の快適さを著しく下げることになります。どのような家電をどの程度使用しているかにもよりますが、家電が特定の回路に集中していないか、家電の起動電流のタイミングが同時に発生していないか、電気の使用方法を再度確認することも必要かもしれません。
これらに問題がないとすれば、やはり電気の容量を上げる以外に方法はないかと思います。その場合、容量を大きくすれば工事費や電気料金が上がりますので、使用する家電やその起動電圧、定格容量の調査を事前に行い、しっかり電気設計してから仕様を決めることをお勧めいたします。
菅野 武 Kanno Takeshi
一級建築士/既存住宅状況調査技術者/JSHI公認ホームインスペクター/AJIHA登録ハウスインスペクター/FLAT35適合証明技術者/建築物石綿含有建材調査者/古民家鑑定士/古材鑑定士/建築物環境衛生管理技術者/被災建築物被災度区分判定・復旧技術者/耐震診断技術者/耐震改修技術者/住宅省エネルギー技術者/防火対象物点検資格者/雨漏り診断士/防災士/ADR調停人候補者資格