はじめに

以前、新築中のお客様から、冬場に建物の基礎工事が行われ、その間に10年に一度クラスの寒波もあり、寒さによるコンクリートへのダメージが心配だというご相談をいただきました。そこで今回は、新築工事の基礎コンクリート打設時について、冬場の寒さで懸念されることやその場合の調査方法についてお話ししたいと思います。

 

コンクリートの初期凍害

寒波による最大の懸念事項は、コンクリートの凍結になります。打設時の硬化前にコンクリートの水分が凍結してしまうと、内部の水分の凍結膨張やモルタルの水和反応の阻害で、コンクリートがスカスカ・ポロポロになり強度低下を招くことになります。

これらは「初期凍害」と呼ばれます。硬化したコンクリートのひび割れに入った水分が凍結する「凍害」とは別ものになります。一般的な初期凍害は、打設時に外側(型枠や外気に接して冷える側)から生じることが多いため、初期凍害が発生した場合に「基礎コンクリートの表面は正常だが、内部が不良」というケースはかなり稀かと思います。

また寒い時期の基礎打設工事の際は季節柄、生コンクリートに防凍剤や耐寒促進剤などを添加しているかもしれません。コンクリートの細かな仕様については(施工会社経由で)コンクリート納品会社からミルシート(品質検査証明書)を取れば確認できるかと思います。

 

可能な調査方法

凍害など諸々の理由でコンクリートの強度について不安が残る場合は、以下のような強度試験を行うことも可能です。

 

①シュミットハンマーによる反発強度測定

特殊なハンマーでコンクリート面を打撃し、その反発数値から強度を計算します。当社でも測定可能です。

※非破壊での調査ですがハンマーの軽微な打撃痕が残ります。

 

②コア抜きによるサンプル圧縮試験

実物の建物から直接コンクリートを切り出し、圧縮破壊試験によって実際の強度を測定します。

※現地で基礎コンクリートの切り出しを行うので破壊検査になります。

 

調査を行う際は、現地でコンクリートの不具合箇所に対して行うことになります。(不具合でない部分は問題無しの結果になるという前提です。)不具合箇所が補修可能な範囲のみの場合は、ハツリ・補修材の再充填などにより是正補修を行うことは可能かと思います。

ミルシートのチェックや強度検査は、施工後の場合でも調査をすることが可能ですので、もしご不安があるようでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

菅野 武 Kanno Takeshi

一級建築士/既存住宅状況調査技術者/JSHI公認ホームインスペクター/AJIHA登録ハウスインスペクター/FLAT35適合証明技術者/建築物石綿含有建材調査者/古民家鑑定士/古材鑑定士/建築物環境衛生管理技術者/被災建築物被災度区分判定・復旧技術者/耐震診断技術者/耐震改修技術者/住宅省エネルギー技術者/防火対象物点検資格者/雨漏り診断士/防災士/ADR調停人候補者資格

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