建物状況調査のほかにも。中古住宅の調査の種類・名称・違い

中古住宅の場合、調査には大まかに以下の種類があります。

  1. 「住宅診断」
  2. 「建物状況調査」(国交省の正式名称は、既存住宅状況調査)※インスペクション(注1)と呼ぶ人もいます。
  3. 「瑕疵保険の検査」
  4. 「FLAT35適合証明の検査」
  5. 「耐震基準適合証明の検査」

注1. 「インスペクション」という言葉について

日本ではまだ厳密な意味で定義されておらず、あまり浸透していません。インスペクションと建物状況調査を同一のものとして考えるひとも、中にはいます。当社の調査業務の区分は、住宅診断=インスペクションと定義しています。

 

調査や検査には、ほかにも業務上の区分がある

上記の1から5のすべての調査・検査には、「現地調査」と「書類・図面調査」が必ずあります。現地調査は、実際に建物を目で見て、計測し、触り、動かし、あるいは稼働させて行います。書類・図面調査は、お預かりした書類の内容に問題がないか、または、もし書類に不足しているものがあれば、役所等で取得が可能かどうか、また実際に取得する等の業務を含みます。調査した内容や基本情報を各調査の独自書式に沿って入力作成する作業も含みます。

 

それぞれの調査の違いは?

1.住宅診断

当社の独自基準の調査です。5つの中で一番広範囲に調査します。中古住宅を購入することに不安があり、建物を詳細に調べてほしい方にお勧めします。住宅ローン減税適用に使用する等の実用性、制度への流用可能性等はありません。

住宅診断については、国交省による定めがありません。従って、調査者の資格の有無、調査内容、有効性等について法的な拘束力がありません。反対に、各社の裁量で顧客によりよい情報や判断のアドバイスを加味できる、とも言えます。

【報告書式】①当社オリジナル書式報告書 ②詳細記載図面 ③売買取引時重要事項説明書添付用報告書

※建物状況調査の内容を網羅し、より詳細に調査をします。建物状況調査報告書としても使用できます。
※書式上追加項目(建物状況調査書式に以下を付加しています。)
  • 総合所見
  • 詳細記載図面(構造/雨水侵入部/経年損耗/床・壁・外部傾斜)
  • 経年損耗・劣化、軽微事象等調査項目追加

 

2.建物状況調査(=既存住宅状況調査)

これは、国交省の定めたもので、調査項目にも規定があります。調査者は既存住宅状況調査技術者の資格を保有していなければなりません。既存住宅状況調査技術者は、基本3年毎に更新が必要です(更新時には講習の受講と考査合格が必要)。

下記は国交省のページにある既存住宅状況調査の報告書式です。

既存住宅状況調査報告書

2ページ中段の「各部位の劣化事象等の有無」の箇所を見るとわかりますが、報告書の最後にある調査項目「設備配管、給排水・電気・ガス」は、調査の必須項目ではありません。また、書式自体が簡易にできており、種々多様な不具合箇所の記載に向いていません。

※当社では、住宅診断に建物状況調査を含有しており、建物状況調査単体の業務は承っておりません。

 

3.瑕疵保険の検査

構造部と雨水侵入部の瑕疵についての保険です。自然災害が原因の不具合や経年劣化、上記保険対象部分以外は、保険でカバーされません。築20年を超える木造住宅の「住宅ローン減税適用」等に使用できます。

瑕疵保険を利用するためには、建物状況調査に加えて、瑕疵保険の基準に適応しているかどうかの検査が必要です。例を上げると、建物状況調査では、床下や小屋裏が目視できなくても、「~という理由のために、目視できなかった」と記載報告すればOKです。瑕疵保険では、目視ができないと、そのことだけで瑕疵保険の加入がNGとなります。また、加入審査のために、瑕疵保険独自の書類の作成、特定箇所の写真撮影が必要です。そのほかにも、「保険」ですので、加入前の事前説明、お客さまの承認・承諾も必要です。他の調査を完了後に瑕疵保険に入りたいとのご要望が出た場合は、再度現地調査をやり直すことになりかねないので、事前にお知らせください。

※建物状況調査と瑕疵保険の検査では、検査内容自体に大きな違いはありません。ただし条件によっては、床・壁の傾き調査に関しては、瑕疵保険の方が調査箇所は少ない場合があります。

【報告書式】報告書は出ません。基準に適合した際は、保険証券、付保証明書(減税手続きに使用可)を発行します。

 

4.FLAT35適合証明の検査

FLAT35融資を利用する際、必要です。瑕疵保険の場合と同様、調査内容は建物状況調査と大きな違いはありません。ただし、若干のFLAT35適合証明独自の調査基準や審査基準があり、それに適合する必要があります。あるいは、築年や建築確認の有無等による独特の基準もあります。

FLAT35適合証明の審査手続きは、適合証明システムという独立したシステムの中で行うので、専用の事務作業をイチから行う必要があります。やはり、他の調査を完了後ご要望があった場合は、現地調査をやり直すこととなります。

【報告書式】(基準に適合した場合のみ)FLAT専用の報告書と適合証明書を発行します。

 

5.耐震基準適合証明の検査

瑕疵保険同様に、築20年を超える木造住宅の住宅ローン減税適用等に使用できます。建物の耐震性能を数値で把握できます。耐震改修計画を立てる際の第1段階目の検査にも使えます。

住宅の構造によって適用できるシステムが異なるので、ここでは木造住宅に限定します。調査内容は建物状況調査と大きく違いませんが、構造部材の施工状況を確認する調査が加わります。そのために、サーモカメラを使用したり、天井裏の構造部材を確認したり、といった作業をします。現地の劣化状況を確認して、木造住宅用の耐震アプリに構造の詳細を書き入れたのち、最終的な耐震性能を計算します。耐震診断については、こちらのHPもご参考にしてください。

【報告書式】耐震診断専用の報告書、耐震基準適合証明書(基準に適合した際のみ)を発行します。

 

【上記以外の調査】床下詳細調査と小屋裏詳細調査

以上の他に、住宅診断のオプション調査として、主なものに床下詳細調査と小屋裏詳細調査があります。

床下詳細調査内容

床下詳細調査では、実際に床下に進入して調査を行います。

  • ◯床下基礎(ひび割れ、欠損、鉄筋露出、蟻害の有無等)
  • ◯土台等(ひび割れ、結合状況、断熱材施工状況等)
  • ◯給排水管(脱落、漏水等)

【報告書式】①当社オリジナル書式報告書 ②詳細記載図面

 

小屋裏詳細調査内容

実際に小屋裏に進入して調査します。

  • ◯主構造(柱・梁・棟・母屋等の劣化状況、固定金具の状態、雨漏れ痕、断熱材設置状況、害獣の有無等)

【報告書式】①当社オリジナル書式報告書 ②詳細記載図面

 

調査範囲は

調査範囲についての「イメージ」図を添付しますので、ご参考にしてください。1~5の調査において、書式や書類業務はすべて異なりますが、細かいので、それについては図に反映されていません。調査範囲でいうと、耐震基準適合証明の検査のうち「構造材サーモカメラ調査」を除いて、住宅診断が一番詳細な調査となっています。

調査範囲イメージ図

ご要望をお聞きして、組合せのアドバイスや割引の制度がありますので、ご相談ください。

 

 

 

菅野 武 Kanno Takeshi

一級建築士/既存住宅状況調査技術者/JSHI公認ホームインスペクター/AJIHA登録ハウスインスペクター/FLAT35適合証明技術者/建築物石綿含有建材調査者/古民家鑑定士/古材鑑定士/建築物環境衛生管理技術者/被災建築物被災度区分判定・復旧技術者/耐震診断技術者/耐震改修技術者/住宅省エネルギー技術者/防火対象物点検資格者/雨漏り診断士/防災士/ADR調停人候補者資格者

 

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