行政の空き家対策と補助金の利用・活用@宇都宮[前編]行政の空き家対策について
【連載】行政の空き家対策と補助金の利用・活用@宇都宮
はじめに
これからの地元の地主さんやアパマン・テナントのオーナーさま向けに、
これからの賃貸経営では「何が変わり、何が必要となっていくのか」をテーマに、
わかりやすく、学び、シェアするための機会となることをめざして、連載していきます。
「空き家対策」と「公的補助金」
オーナーさま向けのコラム第2弾は、前編・後編の2回にわたって、地元の行政機関が考える「空き家対策」と、空き家に利用・活用できる「公的な補助金」などについて、少し学んでいってみましょう。
[前編]行政の空き家対策(宇都宮市)について
行政の計画は?
今後増えていく空き家について、行政は、どのように考えているのでしょうか?
とちぎ住宅診断サービスがある、地元の宇都宮市は、現在、空き家対策計画の策定を進めています。
市は、平成29年2~3月に、その計画素案とパブリックコメントの結果について、HPで公表しました。
宇都宮市HP「宇都宮市空き家等対策計画」(素案)に関するパブリックコメントについて(結果)
公表内容について結論から言うと、、、
同じ空き家でも、個人所有の戸建住宅としての空き家の対策は、従来通り検討されていますが、
賃貸用の共同住宅や戸建住宅は、特に、専用の具体策が検討されていません。
地方行政が行う空き家対策は、基本的な方針と趣旨に関していうと、平成27年2月施行の「空き家等の対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家法)が根拠となっています。
この「空き家法」の中での空き家の取り扱いは、基本的には、補助金や助成金などのアメと、税制優遇の撤廃などのムチの二本立てから成り立っています。
調査や現状把握をする中で、賃貸空き家の調査や統計のカウントなどは行われていますが、数値を把握しようとしているだけで、対応をどうするかなどの検討項目は、ありません。
そうであっても、何も知らずに今後の住宅・空き家政策に振り回されるのは、極めて不利ですので、これらの情報をひもときながら、今後予想される状況や行政の対応について、事前に分析していこうと思います。
ちなみに「空き家法」とは?
1.法整備の経緯
空き家には、倒壊・火災の危険性や防犯・衛生等への悪影響があり、今後、増加していくことも確定的なので、国策としても、空き家対策を進める必要性が高まってきました。
そこで、市町村の空き家対策に法的根拠を与えるため、特別措置法が制定・施行されました。
重要:空き家の所有者ではなく、市町村のための法制度である!
2.概要
空き家法では、市町村が行う具体的施策は定めず、基本的方針のみを示しました。
国が ①基本方針を策定、市町村が ②空き家等対策計画の作成、および、③その他の空き家等に関する施策の推進に必要な事項を定める、と規定されました。
重要:国はガイドラインのみ、運用は市町村が行う!
つまり、
自治体により差が出る。
3.目的
条文によると目的は、
- 地域住民の生命、身体または財産の保護
- (地域住民の)生活環境の保全
- 空き家の活用促進
- 空き家に関する施策の総合的かつ計画的な推進
- 公共の福祉の増進と地域振興への寄与
となっています。
重要:重視・優先されているのは、個人よりも「地域」や「公共」の視点!
※ただし、この法律では、すべての空き家が、空き家対策の対象となるわけではなく、「特定空き家」と行政から認定された空き家が対象となります。
「特定空き家」とは?・・・軽くおさらい
特定空き家とは、「特定空き家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)によると、
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
として行政が認めた空き家のことをいいます。
特定空き家になると
解体などの勧告・命令や、強制執行と費用負担の責任、固定資産税減免などの特例の対象からの除外、などのデメリットが発生します。
それでは、宇都宮市の空き家対策計画(素案)をみてみましょう。
賃貸中の建物は、公的支援や助言が受けられない可能性が
現在の状況では、行政の想定している空き家は、あくまでも個人所有の戸建住宅です。
今後継続して、行政が空き家対策にたずさわる(行政が支援や指導などを行う)ためには、空き家対策が、公益性や公共性、地域性などの条件を満たしている必要がある、と考えます。
逆にいえば、
- 緊急性・危険性が高くない
- 公共性が低い
- 地域住民への影響が少ない
- 地域振興への寄与が見込めない
などの空き家は、「公的支援や助言・指導などが受けられない可能性が高い」のです。
≒ 所有者の自己責任
いまのところ、老朽化して1棟まるごと空室化しているような建物でなければ、空き家法の範疇に該当しないので、すべて所有者の自己責任になります。
さらに、今後、空き家率が上昇していって、空き家政策の効果が得られなかった場合、
「建物の所有者に対して、空き家抑制や解消のための努力義務などが追加されていく(法律や政策の変更の)可能性は高い」
と考えられます。
次回は、[後編]空き家対策に利用・活用できる補助金についてをお話しします。