そもそも、瑕疵の意味とは?
皆さんは、瑕疵という言葉をご存じでしょうか?
瑕疵とは、何らかのきず・欠点あるいは必要なものが欠けている状態のことを指し、法律用語としても使われています。特に建築・不動産用語としては、建物に関わる欠陥や不具合のことを指すのに用いられます。瑕疵担保責任(注1)や瑕疵保険(注2)といった言葉にも使われていますので、耳にしたことがある方も多いかと思います。建物に関する瑕疵には、物理的瑕疵、法的瑕疵、心理的瑕疵、環境的瑕疵の4つの種類があります。
注1:瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、不動産を引き渡した後に隠れた瑕疵が見つかった際にその責任の範囲を定めたもののこと、発覚した瑕疵に対して負う責任の範囲のことを言います。住宅品質確保促進法(品確法)においては、「引き渡し後10年以内に見つかった場合は、売主(または施工会社など)が無償補修などをしなくてはならない」と定めています。新築住宅の場合に瑕疵担保責任の期間は10年ですが、瑕疵と特定できるかによって保証されるかに違いがあります。
注2:瑕疵保険
瑕疵保険とは、瑕疵が発見された場合の損傷個所を補修するための費用を支払うための保険のこと。上記のとおり、新築住宅の場合は10年の保証があります。しかし、品確法では中古住宅は瑕疵担保責任の対象外なので、特に中古住宅購入の際に瑕疵保険の加入を検討されるといいでしょう。
物理的瑕疵
物理的瑕疵に相当するものは、建物の雨漏りや建材の劣化といったものから地盤沈下や構造上の欠陥など多岐にわたります。住まわれている方がご自身で認識している場合や、具体的な不具合箇所を住宅診断等で専門家によって発見できることもあります。しかし、これは経年変化や自然災害による場合もありますので、全ての不具合や欠損箇所で瑕疵と認めることはできません。雨漏りや家の傾きなどは、生活上大きな不快感・不便さを感じるもので、その建物に住まわれる方にとっては非常に大きな問題になるかと思います。そのため、瑕疵か経年変化や災害による劣化かどうかに関わらず、建物に違和感を感じたときや築年数が一定期間を過ぎた際、中古住宅の売買をお考えの場合には住宅診断を受けることをお勧めいたします。
法的瑕疵
法的瑕疵には、主だったもので建ぺい率(注3)・容積率(注4)の違反や建築の売買に関する法令違反等があります。建物自体の物理的な瑕疵とは異なりますが、法的な理由で建物を自由に扱うことができなくなり、具体的には、家を購入しても居住できないといったことや建て替えが必要になるなどの問題が起こります。そのため、法的瑕疵がないかを確認しておくことも、物理的瑕疵がないか確認することと同様に重要です。事前に契約書などの書類に不備がないか、土地に建築制限がかかっていないかなどを確認しておくことが役立ちます。
注3:建ぺい率
土地の敷地面積に対する建築面積の割合のことを言います。
注4:容積率
土地の敷地面積に対する延べ床面積の割合のことを言います。
心理的瑕疵・環境的瑕疵
この2つに関しては、瑕疵が建物を売る側の元所有者や不動産業者では完全に取り除けない要因であることがあります。(例えば、その建物内で事故によって亡くなられた方がいた場合にその事実自体をなかったことにする、近くの工場からの騒音被害があるため工場を移転させる、こういったことは現実的には不可能です。)そのため、瑕疵自体が大きな問題になるというよりも、そのことを正しく通知していない、もしくは、十分に説明していないことで問題になるケースがあります。重大な心理的・環境的瑕疵があった場合には認識していただくことが必要ですが、何をもって心理的・環境的瑕疵とするかは判断が難しい部分も実際には多く存在します。心理的・環境的瑕疵の説明がなかったために契約違反とまでは言えないことも多いため、ご自身で周辺の環境や立地条件をお調べになることが可能でしたら、事前に情報を集めることや不動産会社に問い合わせることをお勧めします。
住宅診断でわかることも…
住宅診断では、建築に関わる瑕疵の中でも物理的瑕疵を発見することがありますが、その場合はどうしたらいいのでしょうか?
物理的瑕疵の項目でも書きました通り、建物の損傷は瑕疵以外にも経年変化や自然災害によって引き起こされることもあります。また、瑕疵として認められ建物自体の重大な欠陥と言える場合でも、実際には法律違反であるとまでは判断されないことも実際には起こりえます。そのため、裁判で賠償を請求するよりも話し合いや協議でどのように瑕疵に対処するか、問題と向き合っていくことが重要となってきます。そういった事態に陥らないことが一番ではありますが、リスクに十分に備えるという意味でも、住宅診断を選択肢としてご検討されることは有益だと思います。弊社では住宅診断でお客様のお住いの状態を確認することはもちろん、お客様と施工・取引業社様が話し合いでトラブルを解決できるよう、ご相談・書類作成等のサポート・コンサルタント業務も承っております。
住宅に関するトラブルでお困りの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
菅野 武 Kanno Takeshi
一級建築士/既存住宅状況調査技術者/JSHI公認ホームインスペクター/AJIHA登録ハウスインスペクター/FLAT35適合証明技術者/建築物石綿含有建材調査者/古民家鑑定士/古材鑑定士/建築物環境衛生管理技術者/被災建築物被災度区分判定・復旧技術者/耐震診断技術者/耐震改修技術者/住宅省エネルギー技術者/防火対象物点検資格者/雨漏り診断士/防災士/ADR調停人候補者資格者